経験の普遍化・一般化
自分の経験を自分の意見として発表する場合、必要な作業があります。経験を普遍化・一般化する作業です。
例として、私の勤務する会社で聞く話を挙げます。海外向けの仕事の場合、日本人ではない、いわゆる外国人と一緒に業務遂行を行います。特に、日本人が余りつきあう機会がない国籍の人と仕事をした場合、その経験を他の人に話す機会がよくあります。経験した本人が話したがったり、他の人がその経験を聞きたがったりするためです。「xx人とは、xxのような性格である」や「xx人は、よくxxする」という話です。

しかし、この場合、その経験が一人や二人の件の外国人と付き合った場合は、その経験は一般的に通用する話ではありません。それにもかかわらず、あたかも、その国籍を持つすべての人に当てはまるかのように話すのは、聞いている人にとって、バイアスのかかった、特別な例を一般的に通用する話と誤解する可能性が大きくなります。

また、会社が社員向けに「xx人と仕事をするときの注意」と解説してある発表している場合もあります。この解説のベースとなったものがどれだけ普遍化・一般化されているか、よくわからない場合もあります。

国民の振る舞いや考え方を調べる場合には、ホフステッド(Hofstede)という人類学者が発表している「5つの次元」の考え方が有効です。彼は世界に所在するIBM社員と、海外の大学生を対象として文化の特徴を調査し、その分析結果を発表しており、このデータは相手の出身国の文化背景を客観的に知る一つの指針になります。

ホフステッドのデータが有効なのは、数十万人を対象に調査し、それに基づいて判断を出しているからです。先に挙げた、個人が経験したせいぜい数人のデータに基づいた判断では、間違った結論に至る場合もあります。

ある経験をしたら、それが一般的に成り立つのかを考える必要があります。数学の世界では、「数学的帰納法」という証明手段があり、正に、2つ程度の具体例から出発し、それが一般的に成り立つかを証明の手順としています。

説得力のある主張をしたり、自分で考えをまとめる場合は、普遍化・一般化の手順が不可欠と思います。


(追記)
ホフステッドは、国民文化を5つの次元からそれらを数値化しています。5つの次元とは、「個人主義対集団主義(IDV: Individualism)」、「権力の格差(PDI: Power Distance Index)」、「不確実性の回避(UAI: Uncertainty Avoidance Index)」、「男性型対女性型(MAS: Masculinity)」、「長期的志向(LTO:Long-Term Orientation Index)」です。この5つの次元から国別の文化に数値をつけていますので、国別に比較ができます。数値は0から100が基本で、国によっては100以上の数値となっていますが、それは、基準を作成した後で測定したある国の数値が100を超える程度であったということです。それぞれの次元の意味することは以下の通りです。

個人主義対集団主義(IDV):
スコアが高いほど、個人主義(個人間の結びつきがゆるく、自分の利害と身近の家族の利害を守る)的な文化。個人主義に対応する集団主義は固く結ばれた社会的な枠組みが特徴で、人々は自分のグループ内の他者に対して、自分が困ったときには面倒を見てくれて、保護してくれると期待する。

権力の格差(PDI):
スコアが高いほど、組織内に権力の大きな差異があることを受け入れる。

不確実性の回避(UAI):
スコアが高いほど、社会の不確実性やあいまいさを避け、安定を図り、リスクを軽減しようとする。

男性型対女性型(MAS):
スコアが高いほど、男性が独断的で支配的な役割を負い、女性はサービス志向的な他者の世話をする役割を負うという傾向がある。

長期的志向(LTO):
スコアが高いほど、物事に対する結果を長期的に待つことができる。

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